マクドナルドは、世界で最も広く展開されているファストフードチェーンの一つです。100以上の国と地域に4万店以上を展開し、ビッグマック、チキンマックナゲット、フライドポテトなどの定番メニューで、フードサービス業界に確かな存在感を築いています。
フィリピンでは、マクドナルドは飲食ブランドの枠を超え、ポップカルチャーの一部として暮らしに根付いています。全国に700店以上を展開するマクドナルド・フィリピンは、新しいマーケティング施策を通じて顧客との接点を広げてきました。2023年初頭に始まった「QRコード:Crave & Claim Deals」キャンペーンも、その一例です。
「Crave & Claim Deals」キャンペーン――巨大QRコードが街に登場
立ち止まり、スキャンして、限定特典を受け取る
2023年1月初旬、マニラ首都圏の街角に巨大なQRコードが現れ、通行人の注目を集めました。これは「Crave & Claim Deals」キャンペーンの中心施策で、マクドナルドアプリのダウンロードと利用を促すために展開された屋外マーケティングです。
仕組みはシンプルでした。通行人がスマートフォンでQRコードをスキャンすると、人気セットが最大40%オフになる限定特典を受け取れます。特典はマクドナルドアプリ経由でのみ利用できるため、アプリの新規利用を促す導線にもなっていました。
キャンペーンは2023年1月2日に始まり、1月5日~15日の期間は全国のマクドナルド店舗で、店内飲食・テイクアウト・ドライブスルーのいずれでも特典を利用できました。アプリへのオンライン流入を促すと同時に、年末年始明けの店舗利用につなげる施策でもありました。
消費者の行動を後押しした特典
主なオファー
QRコードをスキャンすると、アプリ限定の割引が表示されました。主な内容は次のとおりです。
6ピースマックナゲット ソロ2セット――40%オフ
チキンマックド1ピース+フライドポテト2セット――28%オフ
ダブルチーズバーガー ソロ2個――27%オフ
ビッグマック ソロ2個――27%オフ
このほかにも複数のセットが用意されていました。
分かりやすい割引率は、お得さを重視する消費者に直接訴求します。パンデミック後の物価上昇が続く状況では、特に魅力的な提案となりました。
ブランドの価値に感情的な価値を重ねる
このキャンペーンでマクドナルドが提供したのは、商品だけではありません。一人ひとりに向けられたように感じられる体験も、施策の重要な要素でした。
「都会で忙しく過ごした一日の終わりに、おいしいマックをご褒美に。」
このメッセージは都市生活者の気持ちに寄り添い、少し立ち止まって気分を切り替えるきっかけをつくります。QRコードを起点に、特別扱いされているように感じられる瞬間を届けたのです。
キャンペーンから見えるデータとユーザーインサイト
オフラインからオンラインへつなぐ導線
「Crave & Claim」は、フルファネル型のマーケティング戦略として紹介されています。QRコードをオフラインの接点にし、利用者をオンライン上の行動へ導きました。巨大QRコードを活用した施策では、次のような成果が示されています。
マクドナルドアプリのダウンロード数と利用率が大幅に増加した
オフラインの接点からデジタル体験への誘導に成功した
広告を見る人から実際に購入する人へのコンバージョン率が向上した
店舗近くへの配置で、利用までの流れを短くする
QRコードを店舗の近くに設置した点も重要です。スキャンした人は、そのまま最寄りの店舗で特典を利用できます。スキャンから利用までの距離を短くしたことが、行動を促す要因になりました。
このキャンペーンが注目を集めた理由
1. 巨大なデザインが好奇心を引き出した
デジタル広告があふれるなか、街中に現れた大きな白黒のQRコードには、思わず足を止めたくなる視覚的なインパクトがありました。「これは何だろう」という興味が、スキャンのきっかけになります。
2. 手続き不要で受け取れる、実用的な特典
ゲーム、アンケート、複雑なフォーム入力は必要ありません。カメラを開く、スキャンする、特典を受け取るという分かりやすい流れにより、参加への心理的なハードルを下げていました。
3. 日常へ戻るタイミングに合わせた提案
キャンペーンは、年末年始を終えて多くの人が忙しい日常に戻る時期に展開されました。「お気に入りのメニューをお得に楽しむ」という提案は、手軽な選択肢として受け止められやすいタイミングでした。
日本のブランドが応用する際のヒント
これは海外事例ですが、日本のブランドにとっても参考になる点があります。
静的な看板を、スキャン後に特典へ進めるインタラクティブな接点に変える
屋外に設置したQRコードから、アプリやキャンペーンページへの流入を促す
パーソナライズされた体験でブランドの印象を築く――派手さだけでなく、記憶に残る設計を目指す
印刷後に特典ページのリンク先を差し替えたり、読み取り状況をアクセス解析で確認したりする必要がある施策には、動的QRコードが適しています。一方、リンク先を変更しない案内であれば、静的QRコードを使い分けることもできます。
マクドナルド・フィリピンの「Crave & Claim」キャンペーンは、屋外広告(OOH)とデジタル上の行動を結び付けた事例です。都市の街角からスマートフォンの画面へと自然につなげることで、特典への関心と利用行動を一続きの体験として設計していました。